外壁塗装や屋根塗装は、住まいの美観だけでなく、建物そのものを守る重要な工事です。しかし、「どの業者に頼むべきか」で悩む方は少なくありません。
そんな時に注目すべきなのが「一級塗装技能士」という国家資格です。
本記事では、一級塗装技能士の資格概要や無資格業者との違い、依頼するメリット、業者選びのポイントまで詳しく解説します。「塗装工事で失敗したくない」と考えている方は、ぜひ参考にしてください。
「一級塗装技能士」とは?
一級塗装技能士とは、厚生労働省が認定する国家資格「技能検定制度」の一つで、塗装工事に関する高度な技能を有することを証明する資格です。
一級と二級の違い
- 二級塗装技能士:実務経験2年以上で受験可能。基本的な塗装技術と知識を有する。
- 一級塗装技能士:実務経験7年以上、または二級取得後2年以上で受験可能。高度な塗装技術や施工管理能力が求められる。
一級は「現場のリーダーとして品質管理・指導ができるレベル」であることを証明する資格であり、塗装業界におけるトップクラスの技術力を持つ職人である証と言えます。
資格取得に必要な試験内容
- 学科試験:塗料・材料の特性、施工法、安全管理、建築塗装に関する知識
- 実技試験:指定課題に基づいた塗装作業(下地処理・中塗り・上塗りの工程や仕上がりの精度)
合格率は年度によって異なりますが、全国平均で40〜50%程度とされています。長年の現場経験に基づく技術力と、施工理論を正しく理解していることが求められる試験です。
一級塗装技能士が行う外壁・屋根塗装の仕事内容
一級塗装技能士が対応する工事内容は、単なる「塗る作業」だけではありません。
具体的な業務内容
- 外壁塗装(窯業系サイディング・モルタル壁など)
- 屋根塗装(スレート瓦・金属屋根)
- 付帯部塗装(雨樋・破風板・軒天など)
- 下地処理(高圧洗浄・ケレン作業・クラック補修)
- 塗料選定(建物や環境に適した塗料を選ぶ)
- 施工手順の管理(下塗り・中塗り・上塗りの適切な乾燥時間管理)
塗装技能士は「仕上がりの美しさ」だけでなく、「塗膜の耐久性」や「施工後のメンテナンス性」まで考えた施工を行います。また、建物の劣化診断をもとに最適な塗装プランを提案できるのも資格者ならではの強みです。
無資格業者と資格者の違いとは?
外壁塗装や屋根塗装は、見た目の美しさだけでなく、建物の耐久性や住環境を守るうえで非常に重要な工事です。しかし、日本の塗装業界においては、500万円未満の小規模工事であれば資格がなくても施工が可能であるため、業者によって技術レベルや施工品質に大きな差が生まれています。
表面上は「どこに頼んでも同じに見える」塗装工事ですが、資格者と無資格者の違いは、数年後に現れるトラブルリスクという形で如実に表れてくるのです。
技術力の違い
1. 下地処理の丁寧さ(劣化部分の見落としリスク)
塗装工事において最も重要と言えるのが「下地処理」です。どんなに高級な塗料を使っても、下地処理が甘ければ塗膜はすぐに剥がれ、浮きやヒビ割れが発生します。
無資格業者の場合、下地処理を軽視し「汚れを簡単に落として塗るだけ」という作業工程が目立ちます。一方、一級塗装技能士は、ケレン作業(錆落とし・古い塗膜の除去)や高圧洗浄、ひび割れ補修、パテ埋めといった工程を丁寧に行い、塗料がしっかりと密着する状態を作り上げます。
劣化部分を見落としたまま塗装を行うと、早ければ1〜2年で塗膜が剥がれるといったトラブルが起きます。資格者は、現場の状況を細かくチェックし、見えない部分のリスクまで予測した施工を行うため、施工後10年、15年と耐久性が維持されるのです。
2. 塗布量・塗膜厚みの管理(均一性・耐久性への影響)
無資格業者によくあるのが「見た目は綺麗に仕上がっているが、塗膜の厚みが基準に満たない」というケースです。規定量よりも薄く塗布すれば当然、塗料の持つ耐候性や防水性能は発揮されません。
一級塗装技能士は、塗料メーカーが指定する標準塗布量や乾燥時間を厳守し、ローラーやスプレーガンの使い方ひとつにも高い技術力を発揮します。均一な塗膜厚みを確保することで、色ムラ・艶ムラがなく、美しさと耐久性を両立させた仕上がりが実現できるのです。
3. 仕上がり精度(色ムラ・塗りムラ・艶ムラ)
塗装工事の良し悪しは、完成直後の美観だけでは判断できません。施工精度が低ければ、数ヶ月後に色ムラが浮き出たり、艶が消えてしまったりといった問題が発生します。
無資格業者では「一発勝負で塗る」という作業になりがちですが、一級塗装技能士は、天候や湿度、材料の特性を考慮しながら適切な施工手順を守り、均一な塗膜を形成します。だからこそ、施工後何年経ってもムラが出にくく、美しさを保ち続けられるのです。
施工後の責任感・対応力
塗装工事は「塗った瞬間」が最終成果ではありません。数年後、経年劣化や突発的なトラブル(剥がれ・浮き・雨漏り)にどう対応するかで、その業者の本当の誠実さが問われます。
無資格業者のリスク
無資格業者の多くは、施工後のトラブルに対して消極的です。施工不良が発覚しても「自然劣化のせい」「保証対象外」と説明され、追加費用を請求されたり、連絡すら取れなくなる事例も報告されています。
また、下請け業者への丸投げが常態化している場合、現場作業員と施主の間に責任の所在が曖昧となり、施工不良時のたらい回しが起こりやすいのです。
一級塗装技能士が持つ「責任感と誇り」
一級塗装技能士は、国家資格という「技術者としての誇り」を持ち、自分が手掛けた仕事に対して強い責任感を持っています。施工後にトラブルが発生した際も誠実に対応し、保証内容に基づく無償補修や、定期的な点検で早期に不具合を発見するなど、長期的なサポートが期待できます。
一級塗装技能士に依頼する5つのメリット
国家資格が保証する「確かな技術力」
一級塗装技能士は、塗装に関する高度な技術力と豊富な現場経験を国に認められた職人です。塗料メーカーの施工基準を忠実に守り、塗布量・乾燥時間・塗り重ねの精度に至るまで厳格に管理します。
また、塗装対象となる建材の特性(サイディング・モルタル・金属等)や、地域の気候・環境に応じた施工ノウハウも豊富です。これにより、見た目の美しさと耐久性を両立した高品質な塗装工事が実現します。
建物ごとに最適な塗装プランを提案できる
建物の状態や周辺環境は一軒一軒異なります。一級塗装技能士は、事前の劣化診断をもとに「この建物にはどんな塗料が適しているか」「補修が必要な箇所はどこか」を的確に見極め、最適なプランニングを行います。
一般的な業者が「一律の提案」をしがちな中、資格者は予算やライフスタイルに合わせた柔軟な提案ができるため、施主側も納得して工事を進められるのです。
下地処理から仕上げまで高精度な施工
塗装工事で最も差が出るのが「下地処理」です。一級塗装技能士は、ケレン作業(旧塗膜・錆び落とし)、クラック補修、防水処理に至るまで細部にこだわり、塗料がしっかり密着する状態を作り上げます。
この「手間を惜しまない下地処理」が、塗膜の密着性と耐久性を飛躍的に高め、10年以上にわたって美観を保ち続ける仕上がりへと繋がるのです。
施工後のアフターサービスや保証が充実
資格者が在籍する業者では、工事完了後の保証やアフターサポートも手厚く設定されています。具体的には、
- 保証書の発行(最長10年保証)
- 施工後1年・3年・5年ごとの定期点検
- トラブル発生時の無償対応・補修
これにより、万が一の際でも「安心して任せられる」という心強さがあります。
長期的に見たコストパフォーマンスの高さ
無資格業者に比べると、資格者に依頼する場合は初期費用がやや高くなることもあります。しかし、手抜き施工による再修理や早期劣化による再塗装が不要になるため、長期的に見ればトータルコストはむしろ安く済むケースが多いのです。
「安さ」だけで業者を選び、数年で再施工が必要になるよりも、「最初から信頼できる資格者に任せる」ことが、最終的なコスト削減に繋がります。
一級塗装技能士がいる業者を選ぶ際のポイント
一級塗装技能士が在籍している業者であれば「安心」と考えがちですが、実際には「名ばかりの資格者」であるケースや、施工管理がずさんな業者も存在します。資格者が持つ技術力や責任感をしっかりと発揮してもらうためには、「どのような業者に依頼するか」が極めて重要です。
以下の4つのポイントを押さえることで、本当に信頼できる業者を選ぶことができます。
1. 資格者が現場に入るか確認する
業者選びで最も注意すべきは、「資格者が現場に関わるかどうか」です。
広告や名刺に「一級塗装技能士在籍」と書かれていても、実際の施工現場にその資格者が一切立ち会わず、作業は経験の浅い作業員や下請け業者に任せきり、というケースは珍しくありません。
資格者が現場に関わらなければ、その技術力もノウハウも活かされず、せっかく資格者がいる意味がなくなってしまいます。
打ち合わせや見積もり時に、「実際に現場で施工・管理するのはどなたですか?」と具体的に尋ねることが大切です。誠実な業者であれば、資格者がどのように関わるのかを明確に説明してくれます。
2. 自社施工か下請け丸投げかチェックする
塗装業界では、元請け業者が受注だけを行い、実際の施工は下請け業者に丸投げするケースが多く見られます。この場合、中間マージンが発生し、実際に現場に入る職人の質が不透明になるというリスクがあります。
下請け業者に任せきりになると、現場での意思疎通が取りづらく、「思っていた仕上がりと違う」「細かい要望が反映されなかった」といったトラブルが発生しやすくなります。
一方、自社施工の業者であれば、現地調査から施工完了まで一貫して自社の職人が対応するため、施工品質が安定しやすく、責任の所在も明確です。
業者選びの際は、「御社の職人さんが最初から最後まで担当しますか?」と確認し、外注に頼りすぎない体制かどうかを見極めましょう。
3. 見積書の内訳が明確であるかを確認する
見積書を確認する際に最も注意すべきポイントが、「一式」表記の多さです。
例えば、
- 外壁塗装工事 一式〇〇万円
- 屋根塗装工事 一式〇〇万円
といった見積りでは、具体的にどの塗料を使い、どれだけの面積を塗るのか、下地処理の方法や塗布回数がどうなっているのかが分かりません。
一級塗装技能士が関わる業者であれば、
- 塗料のメーカー名・商品名(グレード)
- 塗布面積(㎡数)
- 下地処理の内容(高圧洗浄・ケレン・補修の範囲)
- 塗装工程(下塗り・中塗り・上塗りの回数)
といった具体的な内訳が明記されています。
不明瞭な「一式」表記が多い業者は、必要な作業を省略するリスクや、後から追加料金を請求されるトラブルも少なくありません。しっかりと明細が書かれている業者こそ、誠実な施工をしてくれる可能性が高いのです。
4. 施工実績や口コミ評価を確認する
実際にその業者に依頼した方の声や、過去の施工実績は非常に重要な判断材料となります。
- 施工事例が豊富に掲載されているか(工程ごとの写真や説明があるか)
- 施主の声や口コミが具体的で信頼できる内容か
- 地域密着型で長年活動している業者か(突然できた業者は要注意)
また、Google口コミや地域掲示板での評判もチェックすると、営業時には見えない「業者の本音部分」が見えてきます。
「資格者の施工で満足だった」「説明が丁寧だった」「アフターサポートまでしっかり対応してくれた」といった声が多ければ、その業者は信頼性が高いと判断できます。
逆に、「営業時と話が違った」「工事後に連絡が取れなくなった」といった声が目立つ業者は避けるべきでしょう。
まとめ
一級塗装技能士は、塗装工事における技術力と信頼性の証です。外壁や屋根塗装は「どこに頼むか」よりも「誰が塗るか」で仕上がりと耐久性が大きく変わります。
『一級さん』では、国家資格を持つ職人が在籍する信頼できる業者をご紹介しています。外壁・屋根塗装を安心して任せたい方は、ぜひ一度ご相談ください。